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講師からのメッセージ&生徒の声

講師からのメッセージ&生徒の声

「健康政策学総論・各論」

【高鳥毛先生より】

健康政策の授業は、社会経験豊富な学生がほとんどであったことから、総論では英国のPublic Health and Primary Careに関するテキストを用いて、英国の制度との比較によりわが国の制度の特徴や問題点を学ぶことを行った。
各論授業に先立ち、希望学生4人は訪英しての勉強する機会を得た。ロンドンでは中央の公衆衛生専門機関(HPA)を訪問し、国会の下院の公衆衛生専門委員会(House of Common)に参加し議論を傍聴した。地域の保健医療活動についてはブラッドフォードではPCT、リーズではLPHAを訪問した。リーズでは保健スタッフ宅にホームスティし直に英国の保健スタッフから歓談しながら学ぶ機会を得た。各論の授業の半日はロンドン大学のEric Brunner教授から英国の公衆衛生、保健医療制度について講演とグループワークを通じて学ぶことができた。
各論授業後半はケーススタディ形式を取り入れた。健康医療問題に関わる様々な制度や課題とその問題解決方策について学生間の質疑応答を通じて学びあった。英国とのコントラストを行うことによりわが国の健康医療問題の解決方策に関わる幅広い対応能力を身につけることができた感じがするとの感想が得られている。

【学生のコメント】

日本の保健、医療、福祉のあゆみについて知ることができ現制度を理解することに役立った。こういう話を聞く機会は少ないので、非常に勉強になりました。行政職である以上、こういう勉強はさらに必要であると思います。もっと門戸を開いてもらえたらありがたいです。
総論での学習をベースにした導入の話から対策の話にうつっていったので、非常に理解しやすかったです。今までは「健康」という単眼の視点しかなかったのが、社会の変遷をとらまえて視野を広げてみていいくという視点を自分自身少しは身につけているのかなということを実感しながら授業を聞くことができました。
このような授業は地域保健の中でももっと重点的に取り入れていくべきだと強く感じます。保健師も積極的に耳を傾けるべきですね。


「経済学・経営学の基礎理論」

【伊佐田先生より】

早朝より夕方まで連続の集中講義にもかかわらす、どの受講者の方々も、大変熱心に御取り組み頂きました。
この講義は、経済学や経営学の理論が中心でしたが、受講者のバックグラウンドはバラバラで、理系の方々が大半であったため、とっつきにくい部分も多かったかと思います。
社会科学に於いては唯一絶対の正解はなく、むしろ多様なステークホルダーの利害が一致しない場合も多々ありますが、こうした理論をきちんと踏まえつつ、より良い方向に向けて議論していくことが重要だと思っています。 最後まで頑張って受講された皆様に敬意を表したいと思います。
後期の講義は、こうした理論の理解を前提にした応用研究になりますが、ぜひまた頑張って受講頂ければ、と思います。

【学生のコメント】

・ 一部難しい部分もあったが工夫された授業でした。
・ これまで経済について系統だった、まとまった話を聞いた事がなかったので、大変ためになった。
・修士論文に経済学もかじったといえる内容を入れたいので無謀かもしれませんがTryしてみたいと思います。改めてご指導よろしくお願いいたします。
・先生が熱心に授業をして下さってありがたかったです。医療分野にはあまり入れませんでしたが基礎を学ぶという意味では良かったです。


医事法、知的財産権法

【阿部先生より】

1.「医事法」講義の題材・目標・手法

(1) 題材:医事訴訟の判例
医事法の講義では、医療関係者が知っておくべき医事訴訟判例を題材にします。 新聞で医事訴訟に関する判決が出たとの記事を読んだ場合、結論は分かっても、その事件においてなぜ裁判官がそのような判断を下したのか、裁判官の判断を導いた弁護士の主張はどのようなものであったかまでは分かりません。
(2) 目標:判決文を読むことができるようになり、法律家の思考方法を理解することができるようになること
そこで、本講義では、実際の判決文を読んでいくことによって、医事訴訟判例の判決文を自分で読むことができるようになり、法律家(裁判官・弁護士)がどのように考えているかを理解することができるようになることを目標としています。その上で、医事訴訟判例から学んだことを、日常診療に生かす・医療現場にフィードバックすることができるようになれば、望外の喜びです。
(3) 手法:ソクラテスメソッド
そして、この目標を達成するために、本講義では、教師が一方的に話すレクチャー方式ではなく、教師と学生との対話を通して考える力を養うソクラテスメソッド(アメリカのロースクールで採用されている教授法)を用いて講義を行います。
(4) 講義内容の一例
本講義では、例えば、下記のような問題について、判例をもとに考えます。
・患者への癌告知について判例はどのように判断しているか?家族への告知については異なるか?
・エホバの証人の手術で輸血をしないと助からない場合、医師はどうすべきか?
・乳房切除術のほかに、乳房温存療法についても説明しなければならないのは、どのような場合か?
・患者の退院に際して、医師は患者にどのような注意を与えるべきか?
(5) 2008年度の講義
2008年度の講義においては、各学生が担当判例を発表し、自らの経験をもとにコメントを述べるという講義への積極的な参加・貢献がありました。そして、医事訴訟判例を読むことができるようになっただけでなく、弁護士・裁判官の考え方を理解し、日常診療でも講義で学んだ判例を振り返るという習性を身に付けた学生も多数いました。

2.アメリカとの対比

―謝罪をしたことは責任を認めたことになるか?
―飛行機の中の急病人を助けようとしてミスを犯した場合に責任を問われるか?

本講義においては、日本の判例だけでなく、アメリカの判例や法も紹介し、両者を対比します。 例えば、医療過誤が起きた場合、患者は医療関係者に謝罪を求めますが、医療関係者は明白な過誤でない限り、謝罪することによって責任を認めたことになるのではないかとの恐れから、謝罪することに躊躇します。このような両者の齟齬が紛争に発展することも多いです。アメリカでは、謝罪をしたことは責任を認めたことにはならないとするSorry Lawという法律を規定することによって、謝罪を促進しようとしています。

また、飛行機の中で急病人が出たとのアナウンスを聞いても、ミスをしたら訴えられるかもしれないとの思いから、名乗り出ることを躊躇した経験をお持ちの方もいるでしょう。アメリカでは、このような場合にミスが起きたとしても責任は問われないとする「よきサマリア人の法」という法律があり、急病人に対する手助けを促進しようとしています。

3.裁判傍聴

裁判傍聴も行います。講義で読む判例は、既にできあがったものですが、その判例がどのように形成されていくのかを、医事訴訟の証人尋問を傍聴し、弁護士がどのように尋問をし、医師・患者がどのように証言するかを目の前で見ることにより、具体的なイメージが湧くようになります。

2008年度の講義においては、奈良の妊婦搬送の事件、歯科医との紛争の裁判傍聴を行いました。弁護士と証言者との事前打ち合わせが十分に出来ていないのではないか、裁判官の質問を聞いて裁判官がよく勉強しているように思った、証言者が法廷でお茶を飲むことができるのはなぜか、などといった感想が寄せられました。

4.「知的財産権法」講義の内容

知的財産権法の講義においては、医療関係者が知っておくべき知的財産権法について紹介します。例えば、下記のような問題について、判例と共に紹介します。
・微生物・オンコマウス・DNA断片に特許が成立するか?
・医療方法に特許が成立するか?
・患者の血液が商業的利益を有すると判明した場合、医師は患者に知的財産権の帰属について説明する義務があるか?(Moore  事件)
・医師は、剖検に際して骨・骨髄を採取する場合、患者にいかなる説明する義務を負うか?(死体解剖保存法による摘出臓器等  返還請求事件)
・患者が血液バンクに血液を提供する際、知的財産権・所有権は誰に帰属するか?
・研究成果は誰に帰属するか?(遺伝子スパイ事件)

【学生のコメント】

先生はとても一生懸命で法律を知らない人に教えようとする熱意が伝わってきました。私も法律の知識を思い出しました。

授業当初にいただいたシラバスが、この「医事法」を俯瞰にあたりたいへん有難かったです。地裁→高裁→最高裁と一連の事件の判決を読む機会を得て、最高裁で差戻す例のあることの多いことを見つけるにつけ、それがまた納得できる理由であることから、最高裁の裁判官を支えるスタッフがいかに優秀なのかが伺い知れて面白かったです。
医系としては取り組み難い内容ではないかと思いましたが、自分なりに個々の事例について考えることが出来たと思います。
医療機関で勤務したことがない為か、なかなか議論に参加できなかったが、先生のわかりやすい説明でとても勉強になりました。ありがとうございました。
授業自体レベルが高く感じたのですが、判例を一つ一つ丁寧に解説して頂いた点、又先生はもちろんですが受講者の方も詳細にまとめられて準備されたレジュメ、更に適宜先生から送られてくる資料等、本当に十分な内容が提供されたと思います。講義中理解困難な点も収録した講義を見れることも本当に有難かったです。
具体的な事例について、明解な説明があり大変勉強になりました。また、「裁判により社会は変えられるのか」という前期の私の質問に対しても、色々な資料や課題を提供していただきました。 今まで生きてきた中で、一番素晴らしい授業でした。毎週感動をありがとうございました。 裁判傍聴によって、実際の裁判の雰囲気を知れたことはいい経験になりました。
医事法学についてのイロハから具体的判例に至まで解説いただけたことで全体像をイメージすることができた。